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日本の皆さまへ

ミヒャエラ・グレックラー/医学博士

コロナ危機は、デジタル化を大きく推し進めました。今や、私たちがどれほどデジタルのコミュニケーション手段に頼っているかは、誰の目にも明らかです。同時に、どれほど依存しているかも明らかになりました。それは大人にとっては子どもに比べるとはるかに小さな問題です。なぜかと言えば、大人はテクノロジーを分別を持って使うことができるからです。大人にとって、テクノロジーはサービスとしての側面が大きいのです。

しかし、子どもや若者の場合は異なります。彼らはまだその能力を身につけておらず、肉体的にも精神的にも、アナログの世界で集中的に自身と環境を体験すべき年齢にいるのです。それにもかかわらず、デジタルメディアを使用して、そのコンテンツに浸ってしまうのは問題です。そのため、早い時期からスクリーンメディアに触れた子どもたちや、長時間スクリーンメディアを使用している子どもや若者たちにすでに生じている被害や、これから起こる可能性のある被害についての書籍や文献の数が、急激に増えています。例えば、成長期の子どもがスマートフォンを使用する際の典型的な姿勢は、身体姿勢に害を及ぼすものなので、医師達は懸念を募らせています。また、COVID-19の感染拡大で、学校が自宅学習に切り替わった結果、運動不足とスクリーンタイム増加による肥満が大きく増えたことが、 数多くの研究において示されています。

ヨーロッパの多くの国において、児童精神科や電話相談サービスは対応能力の限界を超えた状態にあり、最も深刻な疾患、特に自殺の危険のある疾患だけを受けつけている状態です。そのため、集中力に関する障害、摂食障害、抑うつ、意欲障害などは治療されないままになっていることが多く、そうした症状を持つ子どもや若者たちは苦しんでいます。これらの症状が、学校での学習の遅れや引きこもり行動につながっていきます。対人関係の問題、特に攻撃性、いじめ、ネットいじめなども日常生活に支障をもたらします。

しかし、特に心配なのは、スマートフォン・コンピューターゲームにおける依存的行動が増えていることです。空いた時間すべてをそうしたゲームで埋め尽くすので、自ら考える創造的な活動の発展が抑制され、害されます。日本の厚生労働省の調査によると、2012年から2017年の間に、こうしたゲーム依存を含むネット依存が疑われる13歳から18歳の中高生の数はほぼ倍増しています。COVID-19パンデミックが起こった年の数字はまだ出ていませんが、さらに大きく増加したのではないかと懸念されています。

こうした中で興味深いのは、中国がすでに対策を講じたということです。最近新聞で大きく報道されたのは、中国がコンピューター・ゲームメーカーに厳しい規制をかけ、子どもたちがゲームで遊ぶ時間を週3時間に制限したことです。それは、次世代の子どもたちの、知能や意欲の発達への懸念からです。一方で中国は経済政策として、すべての小学生にタブレット端末を持たせ、さらに就学前からスクリーン機器の使用に慣れさせることで、知能や意欲の発達を促そうとしています。

しかし、子どもたちの体や心はコンピューターではありません。健全な成長のためには、アナログの、つまり現実の環境とできるだけ積極的に関わる必要があります。創造的な思考、共感、そして自律を育む教育は、こうした能力の発達を促すことで初めて達成できます。そのためには、本物の、信頼に基づいた人間関係が必要です。

このメディアガイドブックは、こうしたことに関する情報を提供し、デジタルメディアの世界において、毎日の生活や学校生活の中でどのようにしたら子どもたちの健やかな成長を促すことができるかを示す目的で書かれました。そして子どもたちをデジタル機器の早すぎる使用から守る方法や、デジタル機器に代わる学習や余暇活動について、豊富な提案をしています。こうした情報が保護者、ソーシャルワーカー、教育者の皆様にとって役立つよう願っています。

この本を日本の読者に提供してくれたイザラ書房と翻訳者の内村真澄さんに心から感謝するとともに、多くの子どもや若者たちがこの本から恩恵を受けるよう、心から願っています。

2021年9月、スイス・ドルナッハにて