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■シュタイナー学校の道徳教育 

井藤 元著
Copyright 2021/四六判上製 264p/
ISBN978-4-7565-0150-9/
定価(2,500円+税)


【内容】

シュタイナーの道徳教育論を読み解くとともに、具体的実践を紹介しながらシュタイナー学校における道徳教育のメカニズムを明らかにする。

シュタイナー教育は、思想家であり教育者である、ルドルフ・シュタイナーが生み出した独自の教育実践である。 芸術を実践の中心に据えたシュタイナー学校の教育実践は世界的に高く評価され、その数は全世界で1000校を超えるといわれている。 そんなシュタイナー学校のカリキュラムには教科としての「道徳」は存在しない。 では、道徳教育がないがしろにされているかと言えば、事態はむしろその逆である。 国語、数学、理科、社会、あらゆる教科の中で、あるいはあらゆる教科をまたいで道徳教育が行われている。 また、そこでは、すべての教科の学びが芸術的な仕方で子どもたちに提示されている。
では、なぜ、教科として独立した形ではなくあらゆる教科の中で道徳教育が行われるべきだと考えられているのか。 なぜ芸術教育と道徳教育が渾然一体となって展開されているのだろうか。 また、子どもたちのうちにどのような力を育むことが目指されているのか。 本書ではシュタイナーの道徳教育論を読み解くとともに、具体的実践を紹介しながらシュタイナー学校における道徳教育のメカニズムを明らかにする。


【まえがきから】

2020年、新型コロナウィルスの影響をうけ、世界中が先行きのみえない状況に直面することとなった。情報が日々更新され、状況は刻一刻と移り変わってゆく。どのように行動すべきか、誰かが答えを知っているわけではない。置かれている状況によって判断が異なってくるような問題も多い。Aという状況下で通用したことが、文脈の異なるBの下では誤った判断となることもある。その都度、ひとりひとりが状況に応じて最適解を導き出す力が試されているのである。既存の枠組み、常識やルールに従って生きるだけでは不十分な、極めて高度な問題に全人類が向き合わねばならなくなった。
こうした状況において求められるのは、言われたことを言われたとおりに行う力ではないはずだ。外側から与えられた命令に盲目的に従うのではなく、生きた現実の中で「この自分が何をなすべきか」を見極めることこそが重要となる。
本書で紹介するシュタイナー教育において、子ども達のうちに育もうとしている力は、こうした正解のない時代においてこそ発揮される。


【プロフィール】

井藤 元
京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。現在、東京理科大学教育支援機構教職教育センター准教授。沖縄シュタイナー教育実践研究会顧問。『シュタイナー「自由」への遍歴——ゲーテ・シラー・ニーチェとの邂逅』(京都大学学術出版会、2012年)、『マンガでやさしくわかるシュタイナー教育』(日本能率協会マネジメントセンター、2019年)、『笑育——「笑い」で育む21世紀型能力』(監修、毎日新聞出版、2018年)、『記者トレ新聞記者に学ぶ観る力、聴く力、伝える力』(監修、日本能率協会マネジメントセンター、2020年)、『ワークで学ぶ教育学 増補改訂版』(編著、ナカニシヤ出版、2020年)、『ワークで学ぶ道徳教育 増補改訂版』(編著、ナカニシヤ出版、2020年)、『ワークで学ぶ教職概論』(編著、ナカニシヤ出版、2017年)、ネル・ノディングズ『人生の意味を問う教室——知性的な信仰あるいは不信仰のための教育』(小木曽由佳との共訳、春風社、2020年)、他。


【目次】

はじめに

第1章 シュタイナー学校における道徳教育と芸術教育の連関

1 「道徳」の授業なき道徳教育
2 芸術の位置づけ — シュタイナーの道徳教育論を支える芸術論
3 シュタイナーにとって芸術とは何か— 感覚的=超感覚的なものの表現としての芸術
4 ゲーテの芸術論を支えるゲーテ自然科学
5 ゲーテ自然科学研究の意義
6 自然認識から芸術的創造へ
7 シュタイナーにとって道徳とは何か
8 直観の道徳的行為への応用 — 道徳的直観をめぐって
9 道徳的人間=自由な人間
10 自然認識、芸術的創造、道徳的行為の連関
11 道徳教育における権威の必要性
12 シュタイナー学校の授業における感覚的=超感覚的なものの提示
    — エポックノートにおける感覚的=超感覚的なもの

インタビュー① 教科の学びにおける道徳教育の実際>    世界の美しさに触れる
   教師の「権威」について
   子どもの問題行動への対応

第2章 フォルメン線描の道徳的意義

1 シュタイナー学校における道徳的基盤 — フォルメン線描の目的
2 フォルメン線描では何がおこなわれているのか
3 シュタイナー教育はすべての教科がフォルメン的である

シュタイナーのフォルメン、クレーのフォルムング

第3章 道徳教育としての音楽教育

  1 シュタイナー教育の柱としての音楽教育
2 シュタイナー音楽理論の理論的背景
3 音楽と自由
4 ドイツのシュタイナー学校における音楽の授業実践
   「精霊ごっこ」の事例
   「ムジーククーゲル遊び」の事例
5 「聴く」ことの意味

インタビュー② 道徳教育としての手仕事

   自己肯定感を育む手仕事の時間
   手仕事の教員の立ち位置
   手仕事におけるリズム・繰り返しの重要性
   発達段階に応じた手仕事の課題
   8年生の劇について
   クラスがうまくいっていない場合に手仕事の教師はいかに子どもと関わるのか
   手仕事の教師による雰囲気作り

第4章 道徳教育としての国語教育

  1 国語における道徳教育 — ユーモアエポックの事例
   ユーモアエポックの位置づけ
   シュタイナーにおける笑いの意味
2 ツァラトゥストラの笑い — シュタイナーのニーチェ解釈
3 学校法人シュタイナー学園におけるユーモアエポックの授業
    — ユーモアエポックの授業方針と授業計画
   授業の流れ
   ユーモアエポック 第1週の学び
   ユーモアエポック 第2週の学び
   ユーモアエポック 第3週の学び
4 自由への準備としてのユーモアエポック

インタビュー③ 道徳教育としての演劇教育

   シュタイナー学校における演劇教育
   長期的ヴィジョンに基づく教育

第5章 シュタイナー学校では教師をいかに育てるのか

  1 道徳教育を担う教師をいかに育成するか — シュタイナー学校における教員養成
2 道徳教育と教員養成の構造的一致
3 滲みこみ型の教員養成
4 受講者には何が求められているのか
   直観はいかに磨かれるか — 聴くことの意義
   フォルメンを生きるシュタイナー学校の教師たち
   同僚性に基づく教師の成長 — 長期的展望に基づく教師同士の関わり
   魂のあり方の変容に向けて おわりに

引用文献一覧
初出一覧
研究協力者一覧